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システム導入・開発や課題解決パートナー選定で重要なのは現場感

第1部(導入と「現場感」の定義)

はじめに

賃貸管理業務は、不動産業界の中でも特に幅広く複雑です。入居者募集から申込受付、契約締結、更新手続き、家賃入金確認、督促対応、修繕依頼、退去立ち会い、原状回復精算、オーナーへの月次報告──これらが同時並行で発生します。担当者は多岐にわたる業務をこなしつつ、入居者・オーナー・業者・社内スタッフなど多数の関係者と連携しなければならないため、負担が大きくなりがちです。

こうした背景から、近年では「賃貸管理DX」としてシステム導入や自動化の取り組みが進んでいます。電子契約、入居者アプリ、RPAによる入金照合、CRMによるオーナー管理など、技術的な選択肢は急速に増えています。ところが、現場の声を聞くと「せっかくシステムを入れたのに結局使われなかった」「むしろ業務が煩雑になった」という失敗事例が後を絶ちません。その最大の原因こそが 現場感の欠如 です。


「現場感」とは何か

現場感とは、単なる知識や理論ではなく、賃貸管理の現場を肌で理解し、担当者の実際の行動や感覚を把握できる力を意味します。

例えば「契約更新に時間がかかる」という課題があった場合、表面的には「電子契約を導入すれば解決できる」と判断しがちです。しかし現場感のあるパートナーは、承認者が外出していて承認が滞る、オーナーの一部は紙を希望して郵送に数日かかる、入力項目が多すぎて処理が進まない──といったリアルな事情を踏まえて提案します。つまり、課題の根本原因を捉えたうえで最適な解決策を設計できるのです。


現場感が欠けた場合に起きる問題

  1. システムが定着しない
    高機能でも「操作が複雑で覚えにくい」「現場フローに合わない」システムは利用が進まず、半年後にはExcelや紙に逆戻りする例が多いです。
  2. 現場が混乱する
    二重入力や追加作業が発生し、かえって負担が増える場合があります。導入後に「前より手間が増えた」と言われるのは典型的なパターンです。
  3. 経営と現場の温度差が拡大する
    経営層は「システムを入れたのだから効率化されたはず」と思い込む一方、現場は「むしろ非効率になった」と不満を抱き、DX全体が停滞することにつながります。

賃貸管理における失敗事例

事例1:高機能システムの不発

管理戸数4,500戸の賃貸管理会社が統合管理システムを導入しました。契約・入金・修繕を一元化できる高機能な仕組みでしたが、画面が複雑で入力作業が多すぎ、担当者は利用を避けるようになりました。半年後にはExcel管理に戻り、数千万円の投資が無駄になりました。

事例2:課題の本質を見誤る

別の賃貸管理会社では「更新業務が遅い」という課題を解決するために電子契約を導入。しかし遅延の原因は「オーナー承認の遅さ」と「郵送依存」にあり、システムだけでは解決せず。結局処理時間は大きく改善されませんでした。


成功事例:現場感を活かした改善

事例1:更新業務の効率化

管理戸数3,000戸の賃貸管理会社では更新処理に平均7日かかっていました。現場感を持つパートナーが承認ルールを整理し、郵送を削減する仕組みを導入。さらに電子契約を段階的に展開したことで、処理期間は2日に短縮され、残業も削減されました。

事例2:入金確認の効率化

管理戸数6,000戸の会社。入金確認に月70時間を費やしていました。パートナーが現場を観察し、「口座を集約」「銀行データのフォーマット統一」「RPAによる自動照合」を提案。工数は月10時間に減り、担当者は入居者対応に時間を振り分けられるようになりました。


まとめ(第1部)

賃貸管理業務におけるシステム導入や開発の成功は、単なる技術力や知識ではなく、現場感をどれだけ持っているかにかかっています。現場を知らないまま進めると失敗につながり、逆に現場感を踏まえた提案は大きな成果を生みます。次のステップでは、この現場感をどう見極め、どのようにパートナーを選定すべきかを掘り下げていきます。

第2部(現場感をどう見極めるか・パートナー選定のチェックポイント)

1. 「現場感」を見極めるコア基準

賃貸管理のシステム導入や開発パートナーを選ぶとき、最初に確認すべきは「現場をどう理解しているか」です。提案資料の華やかさや有名ロゴの列より、現場観察・仮説・検証の3点が語れるかが核心です。

  • 観察:実地のヒアリング計画を示せるか(誰から何を、どの順で聞くか)。
  • 仮説:賃貸管理特有のボトルネック(承認滞留・紙依存・二重入力・入金照合)に対する改善仮説を言語化しているか。
  • 検証:PoCで何を測り、どのKPIで合否を決めるかを事前に提示できるか。

この3点が最初の打ち合わせで自然に出てくるなら、現場感の素地は十分と判断できます。

2. 面談で必ず聞く12の質問

  1. これまで賃貸管理会社で担当した案件の業務領域(更新・入金・修繕・退去・オーナー報告)は?
  2. 成功だけでなく失敗事例と、そこからの学びは?
  3. 現場ヒアリングは誰に・何名・何時間行う設計?繁忙期の考慮は?
  4. 課題を人・ルール・データ・システムに分類して整理した実例は?
  5. As-Is/To-Beの業務フローをどの粒度で描く?サンプルは?
  6. KPIは処理日数・工数・エラー率・未収率のどれを軸に置く?
  7. PoCの範囲は?(例:更新業務1部署×90日)合否の閾値は?
  8. 定着施策(教育・FAQ・権限・ログ監査)はいつ誰が作る?
  9. 既存システムとの連携・ID体系(物件ID/顧客ID)の整合をどう設計?
  10. 変更容易性(設定で対応/追加開発/外部連携)を5年視点でどう比較?
  11. 障害時・法改正時の運用をどう想定?SLAやバックアップ方針は?
  12. ベンダー側の体制と継続性(担当の固定・引き継ぎ・ドキュメント整備)は?

この質問に即答でき、具体例やテンプレートを提示できるパートナーは、賃貸管理の現場感が高い可能性が大きい。

3. RFP(提案依頼書)に入れるべき項目

現場感のない提案を弾くには、RFPの段階で期待値を具体化しておくことが効果的です。

  • 背景・目的:賃貸管理のどのKPIを何%改善したいか。
  • 対象範囲:更新/入金/修繕/退去のうち今回扱う範囲と除外。
  • 非機能:可用性、権限設計、監査ログ、個人情報の保護、法対応。
  • 連携:会計・入金データ・物件マスタとの接続条件、ID体系の前提。
  • PoC:スコープ、期間、合否基準(例:処理日数30%短縮)。
  • 定着:教育計画、FAQ納品、管理者トレーニング、運用責任分担。
  • 見積様式:初期/運用/追加開発/TCO5年の内訳を統一フォーマットで。

このフォーマットで集めると、華美なセールストークではなく比較可能な事実だけが並びます。

4. 比較のベンチマーク表(例)

  • 適合性:賃貸管理の標準フローとUIの合致度
  • 拡張性:設定での変更余地、カスタムの範囲
  • 連携性:API/CSV/Webhook、iPaaS対応
  • 運用性:権限・監査・ログ、監査証跡の見やすさ
  • サポート:問い合わせSLA、一次回答の質、ドキュメント量
  • TCO:5年総額、ユーザー増時の伸び方、追加改修の単価
  • 定着力:教育メニュー、現場トレーニングの設計、FAQ納品

点数化は「影響度×頻度×リスク低減効果」を掛け合わせ、重み付けで総合評価します。

5. デューデリジェンスの進め方

  1. 現場同席のデモ:更新・入金・修繕の実データで操作。
  2. 手戻り試験:マスタ誤登録や承認者不在など、賃貸管理で起きがちな例外を再現。
  3. 運用の“後始末”検証:退去キャンセル、領収ミス訂正、二重入金の処理手順を確認。
  4. セキュリティ/法対応:電帳法、個人情報保護、ログ保全期間の明示。
  5. 移行設計の現実性:名寄せルール、CSVの項目マッピング、並行稼働の期間設定。

チェックが甘いほど、導入後のコストは指数関数的に増えます。

6. 契約時の落とし穴と回避策

  • スコープ不明確:出来ること/出来ないこと/別費用を明文化。
  • 人に依存:キーパーソン退職時の引き継ぎ義務と成果物(設計書・手順書)を契約に。
  • 追加開発の単価:見積の根拠(時間単価×工数×難易度係数)を契約書に添付。
  • 成果保証ではなくプロセス保証:PoC合否基準と是正プロセスを合意。

7. 賃貸管理ならではの評価観点

  • オーナー対応の履歴一元化とレポート出力の柔軟性
  • 入金照合の自動化と未収管理のアラート設計
  • 更新・退去のタイムライン共有(入居者アプリやメール連携)
  • **業者手配(修繕)**のSLA管理と写真・見積の証跡管理
  • 多拠点運用での権限・監査の粒度(店舗/課/担当者単位)

第3部(PoC設計と定着化のポイント)

1. なぜPoC(小規模実証)が必要か

賃貸管理のシステム導入で失敗する多くのケースは、「いきなり全社展開」してしまったことにあります。業務領域が広いため、システムを一度に切り替えると現場は混乱し、定着率が下がります。これを防ぐのが PoC(Proof of Concept:概念実証) です。

PoCは「限られた範囲・期間で仮運用して効果を検証する」手法です。例えば更新業務に限定して3か月試す、入金確認業務だけを特定部署で導入してみる、といった取り組みが該当します。

2. PoCの設計ステップ

  1. 対象範囲を絞る
     更新、入金、修繕、退去などの中から「最もボトルネックになっている業務」に絞ります。
  2. KPIを明確化する
     処理時間短縮率、エラー件数削減、工数削減時間、オーナー満足度など、数値で測れる指標を設定します。
  3. 比較対象を用意する
     PoCの前後で「何がどう改善したのか」を明示できるよう、現状データを取得しておきます。
  4. 期間を限定する
     3か月〜6か月を目安とし、短すぎず長すぎない期間で結果を見極めます。
  5. 合否基準を定義する
     例:「処理日数を30%短縮できなければ本格導入しない」「入力エラー率が半減すれば全社展開」など。

3. 定着化を支える仕組みづくり

3-1. 教育とトレーニング

システム導入において教育を軽視すると、現場が「わからないから使わない」となります。現場感を持つパートナーは、導入時に以下を準備します。

  • ステップごとの操作マニュアル
  • よくある質問(FAQ)の整備
  • 部署ごとの研修会(更新担当向け、入金担当向けなど)
  • ログを用いた「誰がどこでつまずいているか」の可視化

3-2. 現場フィードバックの仕組み

導入後の「声」を吸い上げる仕組みも重要です。

  • 月次レビュー会議での現場意見の共有
  • 問題点を記録するフォームやチャットグループ
  • 改善要望の優先度を決めるプロセス

現場感を理解するパートナーは、これらを設計段階から組み込んでいます。

3-3. 運用ルールの整備

システムは「入れる」だけではなく「どう使い続けるか」が重要です。

  • 権限管理(誰が承認し、誰が入力するか)
  • エラー対応フロー(入金ミスや二重入力時の処理方法)
  • 法改正対応(電帳法・個人情報保護法など)

4. 賃貸管理における定着成功事例

事例1:更新業務のPoCから全社展開へ

管理戸数3,500戸の会社は、まず更新業務だけを対象にPoCを実施。結果、処理日数が7日→3日に短縮されました。KPI達成を確認して全社展開したところ、他業務にもスムーズに拡大できました。

事例2:入金確認の段階的導入

管理戸数6,000戸の会社は、入金確認の自動化を特定支店で試行。PoCで70時間→15時間に短縮できたため、全社に展開。教育研修を並行して行ったため、抵抗感も少なくスムーズに定着しました。


5. 失敗を避けるための注意点

  1. PoCを形式的にしない
     「試しました」で終わるのではなく、KPIに基づき数値で判断すること。
  2. 教育を一度で終わらせない
     人事異動や新入社員の度に再教育を設計しておく必要があります。
  3. 改善要望を放置しない
     現場の声を吸い上げずに放置すると「結局現場は無視される」と定着が進みません。

まとめ(第3部)

システム導入を成功させるには、小さな範囲で試し、成果を確認し、教育と運用設計で定着させる という流れが欠かせません。現場感のあるパートナーは、このプロセスを丁寧に設計し、数値で成功を証明してから全社展開へと導きます。

第4部(まとめと次のアクション)

1. 賃貸管理における現場感の本質的な意義

賃貸管理の現場は、契約・更新・入金・修繕・退去・オーナー対応と、幅広い業務が絡み合う「複雑系」の代表です。ここで成果を上げるには、単なるIT知識やシステム知識ではなく、現場の実態を肌で理解する力=現場感 が欠かせません。

現場感があるパートナーは、課題を表層ではなく本質から捉え、運用改善とシステム導入を組み合わせた提案を行います。逆に現場感を欠いた提案は、どんなに立派なシステムであっても定着せず、投資が無駄になる危険性が高いのです。


2. 現場感を軸にしたパートナー選定の流れ

  1. 課題棚卸しを行う
     自社の業務を「人・ルール・データ・システム」に分けて課題を洗い出す。
  2. RFPで現場感を問う
     提案依頼書に「現場ヒアリング方法」「PoC設計」「教育施策」などを必須項目として記載。
  3. 面談で具体例を確認する
     過去の成功・失敗事例を尋ね、賃貸管理特有の事情を理解しているかを確認する。
  4. PoCで実証する
     更新・入金・修繕などの限られた業務で実際に試し、効果を数値で判断する。
  5. 教育・運用体制まで確認する
     定着に必要な研修・マニュアル・FAQ・権限設計まで踏み込めるかを確認。

3. 今後の賃貸管理DXの展望

今後の賃貸管理業界では、DXが単なる効率化にとどまらず、競争力の源泉 になっていきます。

  • 電子契約の完全普及:紙契約は例外的存在になり、標準はデジタル化。
  • 入居者アプリの浸透:申込から修繕依頼までをワンストップで処理。
  • AI・RPA活用の拡大:入金確認、督促、問い合わせ対応まで自動化。
  • データ活用の高度化:オーナー報告が「現状説明」から「収益改善提案」へ進化。

こうした変化の中で勝ち残るのは、システムを入れただけの会社ではなく、現場感をもとに課題を解決し続けられる会社 です。


4. 株式会社DaNとしての役割

当社・株式会社DaNは、代表自身が賃貸管理の現場経験を10年以上持ち、実際の現場フローや課題を熟知しています。そのため、机上の理論やシステム知識だけではなく、「現場で本当に使えるか」を重視したDX支援 を行っています。

  • 課題棚卸しワークショップ:自社の業務を見える化し、課題を整理。
  • ロードマップ作成支援:短期・中期・長期に分けた改善計画を提示。
  • PoC伴走支援:小規模実証を設計・検証し、効果を確認。
  • 教育と定着サポート:研修・マニュアル・FAQ作成で現場に根付かせる。

現場感を踏まえた提案で、システム導入を「投資対効果の高いプロジェクト」に変えることが可能です。


5. 次のアクション

もし「自社でもDXを進めたいが、現場の声をどう整理すればよいかわからない」と感じるなら、まずは以下のステップから始めてください。

  • 業務フローを書き出し、課題をリスト化する
  • 発生頻度と影響度を評価し、優先順位をつける
  • 現場担当者と経営層が一緒に課題を確認する場を設ける

その上で、現場感を持つ外部パートナーに相談し、PoCから始めるのが最もリスクが少ない進め方です。


まとめ(第4部)

システム導入や開発の成否は、テクノロジーそのものではなく、現場感を持つか否か によって大きく左右されます。賃貸管理の現場は複雑であり、そこを理解しなければ効果的なDXは実現できません。課題を正しく見極め、現場感を重視したパートナーを選ぶことで、システムは単なる道具ではなく、未来の成長を支える基盤になります。



「株式会社DaNでは、不動産業界のリアルな現場経験を活かして、売買・賃貸・管理はもちろん、業務改善や仕組み化まで幅広くサポートしています。

現場の実情を理解したうえで、スタッフとしっかりコミュニケーションを取りながらプロジェクトを進行。情報管理システム「kintone」を活用し、柔軟で現場にフィットしたシステム構築も可能です。

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